尖閣衝突 ビデオ流出 海外の反応
日中両国の報道の相違
日中両国の報道は、時間が経過するにつれ細かい点で微妙なズレを見せた。
例として9月7日事件発生当日の中国の報道の1つ「環球網 huanqiu.com」を見ると、日本の巡視船「よなくに」が中国漁船に対して、(海域からの)退去を警告した後で衝突が発生したとし、「よなくに」の手すりの支柱が折れたとしている。また同巡視船「みずき」の衝突による破損は、右舷高さ1メートル幅3メートルとしている[100]。これらの報道では「よなくに」が中国船に対して退去を警告した点や、「みずき」の右舷の破損に関しては、比較的日本の初期の報道に近い。
しかし事件発生から船長釈放の25日まで継続している、sohu.comの事件を特集したサイト「中国渔船与日本巡逻船发生相撞」では、中国船と日本の巡査船の衝突の様子や衝突箇所が、日本の報道と異なっている[101]。ここではあくまで中国漁船は、自国の海域での操業であったという前提で報道されている。中国漁船が操業していたところ、進路に日本の巡視船が突然現れ、「よなくに」が接触したとしている。また「みずき」との接触後、中国漁船は魚釣島海域を離れたが、その後日本の巡視船が追いかけてきて逮捕したとしている[101]。
香港・文匯報2010年11月6日の記事では、香港職業訓練局海事訓練学院の楊沛強(ヤン・ペイチャン)マネージャーの分析を紹介し、流出映像を分析するかぎり事故原因は日本巡視船が突然方向を変えたためだと報道した[102]。
他国の動き
アメリカ合衆国
9月20日、ジェイムズ・スタインバーグ米国務副長官は、日中間における緊張が高まっていることについて、「最も重要なことは、継続的な対話であり、複雑な状況の中で、対話に参加することが前進する最善の方法だ」と述べ、対話による妥協点を見い出すよう促した[104]。
尖閣諸島付近での緊張が高まる中、2010年9月23日、ヒラリー・クリントン国務長官は、日本の前原誠司外務大臣との日米外相会談で、「尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の適用対象範囲内である」との認識を示し[105][106]、同日行われた会見でロバート・ゲーツ国防長官は「日米同盟における責任を果たす」「同盟国としての責任を十分果たす[107]」とし、マイケル・マレン統合参謀本部議長は「同盟国である日本を強力に支援する」と表明した[108]。また、菅直人内閣総理大臣とバラク・オバマ大統領の日米首脳会談で、両国は「緊密に連携する」ということで一致した[109]。
2010年9月23日にはクローリー国務省次官補が記者との質疑応答で記者の「尖閣諸島は安保条約の適用対象に含まれるのか」という質問に対し、「我々は尖閣諸島が日本の施政下にあると信じているので、安保条約が適用される」[110]と(マスコミを通さず、アメリカ国務省公式サイト上においても)公式に明言した。なお、この記者会見では常に「尖閣諸島(Senkaku Islands)」という日本側に準じた呼称で行われた。
なお、中国のマスコミであるチャイナネットは「『尖閣諸島は日米安保の適用範囲』は日本メディアの歪曲であり、クリントン国務長官はそのような発言をしていない」と報道した[111]が、前記のクローリー国務次官補は記者会見で明確に発言しており、クリントン国務長官も訂正をしていない。
台湾
9月14日に台湾の民間抗議船が、行政院海岸巡防署の巡防船12隻に保護されながら日本のEEZ内にまで進出し、海上保安庁の巡視船11隻と対峙し、海岸巡防署の官吏が日本側に対して領土声明を発表した。これに対して台湾政府は「民間の自発的行動」と称賛した[112]。また、17日に来日していた中国国民党の金溥聡秘書長(幹事長)は「彼らは漁民のライセンスを持っており、出船を禁じることはできない」と正当性を強調した。また「(同諸島を巡る対応で)台湾が中国と連携することはない」、「同諸島の主権が台湾にあるとの従来の主張に変わりはない」とも述べた[113]。
李登輝元総統は尖閣諸島を「歴史的に見て日本の領土」と発言し、「おネエちゃんがきれいだからといって、私の妻だと言う人間がどこにいるのだ」などと、中国や台湾が領有権を主張していることを皮肉った[114]。
事件の前兆と見られる「領海侵犯の増加」
産経新聞の報道によると、2010年9月10日の衆院国土交通委員会で、海上保安庁の鈴木久泰長官が、2010年に入り中国籍の漁船の領海侵犯が急増していることを明らかにした[115]。これによると、尖閣諸島周辺の領海内で海保が外国籍の船舶に立ち入り検査した事例が2008年は2件、2009年は6件、2010年は9月時点ですでに21件であり、中国船に限ると2008年に1件、2009年は0件、2010年は9月時点で14件であった。
なお「領海侵犯」とは、 沿岸国でない他国の船舶に認められている無害通航権に反し、”無害でない通航”を他国の船舶が沿岸国の領海内で行うことである。よって外国の船舶が領海へ無断で入ったからといって直ちに「領海侵犯」とはならず、「領海侵犯」は「領空侵犯」とは異なり国際法上の用語でもない。これは、国家が領空に対して排他的な管轄権を有するのと違って領海に対して排他的な管轄権を有さないからである。この本来の意味での「領海侵犯」の定義に照らせば、産経新聞の記事が「領海侵犯」と主張している「尖閣諸島周辺の領海内で海保が外国籍の船舶に立ち入り検査した事例」は、必ずしも本来の意味での「領海侵犯」だったかは明確ではない。
ただし本件に限って言えば、件の漁船の「公務執行妨害罪」や「漁業法」違反の「立ち入り検査忌避罪」が成立しており、「外国人漁業の規制に関する法律」違反容疑もあり、沿岸国の日本の法令に対する違法行為が認められることから、無害通航には該当せず「領海侵犯」が成立する。
分析
- ウォールストリート・ジャーナルは2010年9月13日、「中国の領土権の主張をめぐる地域的な緊張の高まりを映し出している」「今回の事件がどこまで発展するかは不明だが、日中双方のナショナリストがそれぞれの政府に対し強い措置を取るよう求めており、日中ともに引く構えはない」と分析した。また中国船が故意に衝突させたと疑っている日本側も、過去に攻撃的な作戦行動をしてきた経緯があるとした上で、「日本は、脅されてすごすごと引っ込みはしないということを示す必要はあるだろうが、そのために尖閣を利用するのは危険だ」と、自制も求めている[116]。9月24日の記事では、「ネット上の意見を見る限り、日本は完全な敗者」と指摘した[117]。
- 読売新聞は社説(2010年9月16日付)で、「中国は海底資源の存在が明らかになった1970年代から尖閣諸島の領有権を主張し、それを1990年代からの「反日・愛国」教育で国民に浸透させてきた。尖閣問題で「政府は弱腰」との印象を与えれば、国内経済格差などへの不平や不満に“引火”し、中国国民の矛先が共産党指導部に向けられかねない――。そんな懸念もあって、中国政府は今回、日本に高圧的な態度をとっているのだろう。だが、それは明らかに筋が違う話だ。」と指摘した[118]。9月24日の記事では、船長の釈放について、「捜査を徹底せず、不明確な根拠のままで釈放を決めたことに、日本側の“超法規的措置”との指摘は免れない」と述べている[119]。
- 2010年9月15日、ジョージ・W・ブッシュ政権で国務副長官を務めたリチャード・アーミテージは仙谷官房長官との会談で、「中国は尖閣諸島で日本を試している」と指摘した[120]。また、中国の東シナ海での活動活発化については、「西沙、南沙両諸島の領有権問題でベトナム、マレーシア、フィリピン、台湾に警告する意味合いも強いのではないか」と分析した[120]。
- ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、9月10日と20日付の2回、ニコラス・クリストフ記者のコラム記事を掲載した。記事内でクリストフは「太平洋で不毛な岩礁をめぐり、緊張が高まっている」とした上で、「米国は核戦争の危険を冒すわけがなく、現実的に安保発動はゼロだ」とし、私見として「中国の方に分がある」と発表した[121][122]。この記事について在米日本総領事館は即座に抗議、反論する文書を送付した。クリストフはこの文書を20日のコラムで一部公開し、反日運動への参加を呼び掛けた。実際に、読者からは、「日本人は歴史を変えるのが得意だ」などと日本を一方的に中傷する書き込みが多く見られている[123]。
- ダイヤモンド社は「レアアースの輸出規制」、「膨張する軍事予算」、「サイバー戦力」、「日米同盟」、「日本国債買い増し・円高」などに触れ、「海底に国旗を立てて領有権を主張する 中国に日本はこんなに無防備でいいのか」という論調で分析した[124]。
- ワシントン・ポストやロサンゼルス・タイムズ、インドのタイムズ・オブ・インディアは、中国は日本に強烈な圧力を行使できることを示したとし、日本は圧力に屈したと報道した[125]。
- 世界日報は社説にて、中国が「13億人市場」という経済力を簡単に政治的な圧力に変えてしまう体質が日本にとってリスクであると指摘している[126]。
- 田母神俊雄は、尖閣問題を契機に中国から史上最大級の高度な情報戦争が仕掛けられているとしており、「第1段階として、問題がない事象に言いがかりをつけ、第2段階で国をあげて騒ぎたてる。第3段階で、懐柔策として問題の棚上げを提案し、結果的に問題自体を既成事実化する」としており、2010年10月30日現在は第2段階であるとしており、日中関係はすでに有事と考えるべきであるとして中国の戦略に乗せられてはならないとしている[127]。
- 2010年10月2日、香港のメディアは、中国指導部が今年に入ってから尖閣諸島などの領土問題を「核心的国家利益」と位置付けたと報じた[128]。
- 産経新聞は、衝突映像流出に対する中国外務省の「日本の行為自体が違法だ。いわゆるビデオ映像でこうした真相を変えることはできず、日本側の行為の違法性は隠せない」との談話に日本の政府および民主党政権が抗議・反論を行わないことを非難し、このままでは従軍慰安婦や南京大虐殺のように嘘が一人歩きするとの懸念を表明している[129]。
【海外の反応】外国人にもわかるわな! 「尖閣諸島、挑発しているのはどっち?」
labaq.com/archives/51519856.html - キャッシュ
日本の巡視船は、中国漁船からわずか何十メートルの位置をくるくると回り続けていたん だよ。そしてどんどん近づいていって、ぶつかったんだ。 ・この後ろからの2度目の衝突で 、中国は日本の船がわざと進行方向を邪魔したと編集した上で言っ ...