海岸法 (かいがんほう; 公布:昭和31年5月12日法律101号、最終改正:平成14年2月8日法律第1号)は、海岸の保護等を定めた法律である。
目的
1956年、津波、高潮、波浪等による被害から海岸を防護することを目的に制定された。法律の制定当時における、海岸のレジャー利用は規模も小さく、頻度も夏場に限られていた状況であったが、時代を経るに従い海岸法の枠で縛ることができない構造物の設置、大型四輪駆動車の乗り入れなど規模が拡大、また通年型で利用される場所も増加した。1999年、総合的な海岸管理制度を目指し、「海岸環境の整備と保全」、「公衆の海岸の適正な利用」を追加した抜本的に改正する。この改正で、ほぼ全ての海岸線に海岸管理者が置かれ、海岸の私的利用が大幅に制限される。
- 海岸保全区域(2条)
- 海岸浸食等の被害から海岸を守るために、海岸法に基づき海岸管理者は海岸保全区域を指定する。海岸保全区域では堤防、突堤、護岸、胸壁、離岸堤等の施設が設置されるとともに海岸の利用は許可を要することもある。
- 海岸管理者(5条)
- 都道府県知事が指定した海岸保全区域では都道府県知事、海岸保全区域外は地元市町村長環境の保全、適正な利用のため、海岸への自動車の乗り入れなど一定の行為が制限または禁止される。
- 国による直轄管理(37条の2)
- 国土保全上極めて重要であり、かつ、地理的条件及び社会的状況により、都道府県知事が管理することが著しく困難又は不適当な海岸については、国(主務大臣)が海岸管理者となることも想定されているが、実際に適用されている地域は沖ノ鳥島のみである(沖ノ鳥島の保全のために追加した条文ともいえる)。
関連項目
- アカウミガメ
- 港湾、漁港(海岸法の適用除外区域)
- コンクリートブロック
- 環境法令一覧、環境法、日本の環境と環境政策
海岸法
(昭和三十一年五月十二日法律第百一号)
(昭和三十一年五月十二日法律第百一号)
最終改正:平成二六年六月一三日法律第六九号
(最終改正までの未施行法令) | |
平成二十六年六月十三日法律第六十九号 | (未施行) |
第一章 総則(第一条―第四条)
第二章 海岸保全区域に関する管理(第五条―第二十四条)
第三章 海岸保全区域に関する費用(第二十五条―第三十七条)
第三章の二 海岸保全区域に関する管理等の特例(第三十七条の二)
第三章の三 一般公共海岸区域に関する管理及び費用(第三十七条の三―第三十七条の八)
第四章 雑則(第三十八条―第四十条の五)
第五章 罰則(第四十一条―第四十三条)
附則
第一章 総則
第二条 この法律において「海岸保全施設」とは、第三条の規定により指定される海岸保全区域内にある堤防、突堤、護岸、胸壁、離岸堤、砂浜(海岸管理者が、消波等の海岸を防護する機能を維持するために設けたもので、主務省令で定めるところにより指定したものに限る。)その他海水の侵入又は海水による侵食を防止するための施設(堤防又は胸壁にあつては、津波、高潮等により海水が当該施設を越えて侵入した場合にこれによる被害を軽減するため、当該施設と一体的に設置された根固工又は樹林(樹林にあつては、海岸管理者が設けたもので、主務省令で定めるところにより指定したものに限る。)を含む。)をいう。
2 この法律において、「公共海岸」とは、国又は地方公共団体が所有する公共の用に供されている海岸の土地(他の法令の規定により施設の管理を行う者がその権原に基づき管理する土地として主務省令で定めるものを除き、地方公共団体が所有する公共の用に供されている海岸の土地にあつては、都道府県知事が主務省令で定めるところにより指定し、公示した土地に限る。)及びこれと一体として管理を行う必要があるものとして都道府県知事が指定し、公示した低潮線までの水面をいい、「一般公共海岸区域」とは、公共海岸の区域のうち第三条の規定により指定される海岸保全区域以外の区域をいう。
3 この法律において「海岸管理者」とは、第三条の規定により指定される海岸保全区域及び一般公共海岸区域(以下「海岸保全区域等」という。)について第五条第一項から第四項まで及び第三十七条の二第一項並びに第三十七条の三第一項から第三項までの規定によりその管理を行うべき者をいう。
第三条 都道府県知事は、海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護するため海岸保全施設の設置その他第二章に規定する管理を行う必要があると認めるときは、防護すべき海岸に係る一定の区域を海岸保全区域として指定することができる。ただし、河川法第三条第一項に規定する河川の河川区域、砂防法第二条の規定により指定された土地又は森林法第二十五条第一項若しくは第二十五条の二第一項若しくは第二項の規定による保安林(同法第二十五条の二第一項後段又は第二項後段において準用する同法第二十五条第二項の規定による保安林を除く。以下次項において「保安林」という。)若しくは同法第四十一条の規定による保安施設地区(以下次項において「保安施設地区」という。)については、指定することができない。
2 都道府県知事は、前項ただし書の規定にかかわらず、海岸の防護上特別の必要があると認めるときは、保安林又は保安施設地区の全部又は一部を、農林水産大臣(森林法第二十五条の二の規定により都道府県知事が指定した保安林については、当該保安林を指定した都道府県知事)に協議して、海岸保全区域として指定することができる。
3 前二項の規定による指定は、この法律の目的を達成するため必要な最小限度の区域に限つてするものとし、陸地においては満潮時(指定の日の属する年の春分の日における満潮時をいう。)の水際線から、水面においては干潮時(指定の日の属する年の春分の日における干潮時をいう。)の水際線からそれぞれ五十メートルをこえてしてはならない。ただし、地形、地質、潮位、潮流等の状況により必要やむを得ないと認められるときは、それぞれ五十メートルをこえて指定することができる。
4 都道府県知事は、第一項又は第二項の規定により海岸保全区域を指定するときは、主務省令で定めるところにより、当該海岸保全区域を公示するとともに、その旨を主務大臣に報告しなければならない。これを廃止するときも、同様とする。
5 海岸保全区域の指定又は廃止は、前項の公示によつてその効力を生ずる。
一 土石(砂を含む。以下同じ。)を採取すること。
二 水面又は公共海岸の土地以外の土地において、他の施設等を新設し、又は改築す
ること。
三 土地の掘削、盛土、切土その他政令で定める行為をすること。
2 前条第二項の規定は、前項の許可について準用する。
第八条の二 何人も、海岸保全区域(第二号から第四号までにあつては、公共海岸に該当し、かつ、海岸の利用、地形その他の状況により、海岸の保全上特に必要があると認めて海岸管理者が指定した区域に限る。)内において、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
一 海岸管理者が管理する海岸保全施設その他の施設又は工作物(以下「海岸保全施設等」という。)を損傷し、又は汚損すること。
二 油その他の通常の管理行為による処理が困難なものとして主務省令で定めるものにより海岸を汚損すること。
三 自動車、船舶その他の物件で海岸管理者が指定したものを入れ、又は放置すること。
四 その他海岸の保全に著しい支障を及ぼすおそれのある行為で政令で定めるものを行うこと。
第三十七条の四 海岸管理者以外の者が一般公共海岸区域(水面を除く。)内において、施設又は工作物を設けて当該一般公共海岸区域を占用しようとするときは、主務省令で定めるところにより、海岸管理者の許可を受けなければならない。
第三十七条の五 一般公共海岸区域内において、次に掲げる行為をしようとする者は、主務省令で定めるところにより、海岸管理者の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める行為については、この限りではない。
一 土石を採取すること。
二 水面において施設又は工作物を新設し、又は改築すること。
三 土地の掘削、盛土、切土その他海岸の保全に支障を及ぼすおそれのある行為で政令で定める行為をすること。
第三十七条の六 何人も、一般公共海岸区域(第二号から第四号までにあつては、海岸の利用、地形その他の状況により、海岸の保全上特に必要があると認めて海岸管理者が指定した区域に限る。)内において、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
一 海岸管理者が管理する施設又は工作物を損傷し、又は汚損すること。
二 油その他の通常の管理行為による処理が困難なものとして主務省令で定めるものにより海岸を汚損すること。
三 自動車、船舶その他の物件で海岸管理者が指定したものを入れ、又は放置すること。
四 その他海岸の保全に著しい支障を及ぼすおそれのある行為で政令で定めるものを行うこと。
第四十一条 次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第七条第一項の規定に違反して海岸保全区域を占用した者
二 第八条第一項の規定に違反して同項各号の一に該当する行為をした者
三 第八条の二第一項の規定に違反して海岸管理者が管理する海岸保全施設を損傷し、又は汚損した者
第四十二条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第八条の二第一項の規定に違反して同項各号の一に該当する行為をした者(前条第三号に掲げる者を除く。)
二 第十八条第六項(第三十七条の八において準用する場合を含む。)の規定に違反して土地若しくは水面の立入若しくは一時使用を拒み、又は妨げた者
三 第二十条第一項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者
四 第二十条第一項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
五 第三十七条の四の規定に違反して一般公共海岸区域を占用した者
六 第三十七条の五の規定に違反して同条各号の一に該当する行為をした者
七 第三十七条の六第一項の規定に違反して同項各号の一に該当する行為をした者
第四十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するのほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
■公共海岸
国又は地方公共団体が所有する公共団体が所有する公共の用に供されている海岸の土地(他の法令の規定により施設の管理を行う者がその権原に基づき管理する土地として主務省令で定めるものを除く。)及びこれと一体として管理を行う必要があるものとして都道府県知事が指定し、公示した低潮線までの水面
■一般公共海岸区域
公共海岸の区域のうち海岸保全区域以外の区域
■海岸保全区域
海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護すべき海岸に係わる一定の区域(公共海岸以外の民有地等を含む。)
国又は地方公共団体が所有する公共団体が所有する公共の用に供されている海岸の土地(他の法令の規定により施設の管理を行う者がその権原に基づき管理する土地として主務省令で定めるものを除く。)及びこれと一体として管理を行う必要があるものとして都道府県知事が指定し、公示した低潮線までの水面
■一般公共海岸区域
公共海岸の区域のうち海岸保全区域以外の区域
■海岸保全区域
海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護すべき海岸に係わる一定の区域(公共海岸以外の民有地等を含む。)
海岸の種類と管理者は
海岸には,海岸保全区域,港湾区域,漁港区域などの特別に指定された区域と,それ以外の一般公共海岸区域があります。
1 海岸保全区域
海岸保全区域は,高潮,波浪,津波から人命,財産を守るため,海岸法に基づいて知事が指定した区域をいい,その管理は,知事又は市町村長が行います。
2 港湾区域
港湾区域は,営造物としての港湾を管理運営するため必要な最小限の区域について,港湾法に基づいて国土交通大臣又は知事が港湾管理者に対して認可した水域をいい,その管理は,港湾管理者が行います。
港湾隣接地域
港湾隣接地域は,水域にある港湾を保全し,水である港湾施設を維持し,港湾の背後地を保全するために港湾区域に隣接する地域において,港湾法に基づいて港湾管理者が指定した地域をいいます。
3 漁港区域
漁港区域は,漁港漁場整備事業の総合的かつ計画的な推進と漁港の適正な維持管理等のため,漁港漁場整備法に基づいて農林水産大臣,知事又は市町村長が指定した区域といい,その管理は,漁港管理者が行います。
4 農地海岸
農地海岸は,農地を保全するため,土地改良法の規定による土地改良事業で設置した干拓堤防,護岸等の海岸保全施設がある又はそれらの施設を設置しようとする海岸保全区域をいい,その管理は知事又は市町村長が行います。
5 一般公共海岸区域
一般公共海岸区域は,海岸保全区域以外の区域をいい,その管理は,知事又は市町村長が行います。
海岸法の改正(平成11 年)
我が国において海岸法は、従来、津波や台風、波浪、侵食等の災害に対して、人命や財産を災害から守るとともに、国土の保全を図ることを第一の目的としていた。
しかし、近年、余暇需要の増加、砂浜の侵食やゴミ問題の深刻化、海域の汚損など海岸を取り巻く変化が顕著となってきており、このような変化に対応した新たな海岸のあり方として、災害に対する安全の一層の向上と良好な海岸環境の整備と保全とが図られ、さらに、人々の多様な利用が適正に行われる空間となることが求められて
いる。
いる。
このような背景から、平成11 年に海岸法が改正され、旧海岸法の目的であった「海岸の防護」とともに、新たに「海岸環境の整備と保全」及び「公衆の海岸の適正な利用の確保」という2つの目的が加わり、これらの3つの目的が調和するよう総合的に海岸の保全を推進することとなった。
改正海岸法(平成11 年)では、海岸の保全に関する基本的方向性を明らかにするとともに、地域の意向等を反映するため、国が「海岸保全基本方針」(平成12 年5月公表)を定め、この基本方針に基づいて、都道府県知事が管内の海岸について、「海岸保全基本計画」を定めることになった。
<平成11 年 海岸法改正のポイント>
1.法目的の改正
旧海岸法の目的である「海岸の防護」に、「海岸環境の整備と保全」及び「公衆の海岸の適正な利用の確保」が加わり、それらが調和した総合的な海岸の管理を行うこととした。
1.法目的の改正
旧海岸法の目的である「海岸の防護」に、「海岸環境の整備と保全」及び「公衆の海岸の適正な利用の確保」が加わり、それらが調和した総合的な海岸の管理を行うこととした。
2.一般公共海岸区域の創設
自然公物として公衆の自由使用に供される海岸を「公共海岸」とし、また、公共海岸のうち海岸保全区域以外の区域(従来の法定外公共物)を「一般公共海岸区域」として、それぞれ法律上位置付けた。
3.地域の意見を反映した海岸整備の計画制度の創設
海岸の保全に関する基本的な方向性を明らかにするとともに、地域の意向等を反映するため、国が定めた海岸保全基本方針に基づいて都道府県知事が管内の海岸について、海岸保全基本計画を策定することとした。
4.海岸管理における市町村参画の推進
日常的な海岸管理への市町村の参画を促進するため、市町村長がその発意により、都道府県知事と協議して、海岸保全区域及び一般公共海岸区域における一部の管理を行うことを可能とした。
5.海岸の適正な保全のための措置の創設
指定区域等において、みだりに行う一定の行為を禁止できる制度とともに、簡易代執行制度や海岸の維持に関する原因者負担制度が創設された。
海岸保全区域又は一般公共海岸区域の土地の掘削等の許可申請
項目 内容 内容・資格 根拠法令等 受付期間海岸保全区域又は一般公共海岸区域において、土地の掘削、盛土及び切土等を行う場合には、当該区域の海岸管理者の許可を受ける必要があります。 |
掘削等を行う期日の2週間程度前 |
海岸保全区域又は一般公共海岸区域における施設等の新設改築許可申請
項目 内容 内容・資格 根拠法令等 受付期間海岸保全区域の水面若しくは公共海岸の土地以外の土地又は一般公共海岸区域の水面において、施設又は工作物を新設し、又は改築する場合には、当該区域の海岸管理者の許可を受ける必要があります。 |
新設等を行う期日の2週間程度前 |
海岸保全区
海岸法の改正(平成11 年)
又は一般公共海岸区域の占用許可申請 項目 内容 内容・資格 根拠法令等 受付期間 受付窓口
海岸保全区域又は一般公共海岸区域において、施設又は工作物を設けて当該区域を占用する場合には、当該区域の海岸管理者の許可を受ける必要があります。 |
占用する期日の2週間程度前 |
各土木事務所 管理担当 各港湾事務所 管理担当又は港営担当 各農林振興局 管理担当 |